400字小説
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『ありがとう!』 <400字小説>
あかしんごうを、まちながら、マコはとなりにならんでまっている。
おばあちゃんのかおをみていた。しんどそうなかおをして、たっている。
マコはおばあちゃんのもっているにもつを、ひきよせながら、
「もつ、もつ」といっている。
ママがおばあちゃんにはなしかけた。
「すいません、このこがにもつをもちたいといっているのですが」
おばあちゃんはマコをみつめて「ありがとうさん」といった。
でも、それはマコにはもてなかった。
「じゃあ、はんぶんずつもってね」と、おばあちゃんはほほえみをかえした。
8メートルどうろのおうだんほどうを、
マコとおばあちゃんはゆっくりゆっくりとたのしむようにあるいた。
「おなまえはなんというの?」
「マコ」
「マコちゃんというの?かわいいね!」
そのこうけいはひまごとおばあちゃんのすがただった。
マコにも、じっさいにひいおばあちゃんがいた。
だから、マコはおばあちゃんにちかよれたのかもしれない。
はるのひが、ふたりのせなかをてらしていた。
日野貴之(西口賢治)