華氏911

監督/マイケル・ムーア 主演/ジョージブッシュ
『華氏911・それは自由が燃える温度』ムーア監督の独特のユーモアセンスから来るタイトルだ。アメリカ国民にとって忌まわしき、あの9月11日の同時多発テロ。彼らはそれを911という。日本人にとって広島の原爆ドームが平和への希求のシンボルであるとするならば、WTCビルはアメリカが世界経済の中心であるというシンボルとしての象徴。それを爆撃されたのだから、アメリカ人気質としては許せない出来事だ。筆者はあの年の5月、ボストンからサンフランシスコ、アメリカ横断6600キロのドライブの途中、ニュ-ヨークのマンハッタンから抜け出すのに道に迷い、WTCの真下に辿り着いて見上げたことが、未だに甦る。翌年の5月に再び訪れた時、何ともいえぬ寂寥感と憤怒の念に駆られて、辛いよりも苦しい思いをしたことがある。日本人ですらそうであるのだからあのアメリカ人からすればやるせない華氏1000度ぐらいの想いがあるのは予想できる。そのような許せない、許してはいけない思いを、ムーア監督が華氏911というタイトルでドキュメンタリィ映画を作った。
 主演のジョージWブッシュは完全な悪役だ。おそらく日本では天地がヒックリ返ってもこんな映画は作れないだろう。大統領は国の第一人者だ。日本の首相とは訳が違う。それをここまでこき下ろすなどとは思いも付かぬことだ。しかし、ここに紹介される事実、リアル・エンターティメントは紛れもない真実だ。「やらせ」などはまったくない。勿論のことながらブッシュ本人が、悪役を演じるはずがないのだ。
○ 911テロ発生当時、ブッシュはフロリダの幼稚園で童話を読んでいた。事務官の緊急報告に10分弱の時間、パニックに陥った彼は何の判断を下すことなく静止した。○大統領に就任してから9/11までの8ヶ月間、ワシントンポストによると42%が休暇だった。○パパ・ブッシュ(大統領の父)は石油をめぐって、ビン・ラディン一族とのビジネス上の特別な“つながり”を持っていた。⇒○テロ直後、飛行機運行が再開されると、いち早く、ビン・ラディン一族24人はFBIの取調べを受けることなく、出国許可をもらい、国外に脱出(この場合は正々堂々というのか?)している。これらの内容などがコト事細かに、ムーア監督によって編集され映画となっている。来年のアカデミー賞の主演男優賞にブッシュがノミネイトされたとしたら、私は心から喝采を贈ってアメリカ人を尊敬するだろう。第57回カンヌ国際映画祭パルムドール受賞・国際批評家連盟賞ダブル受賞を獲得したこの作品は一見の価値がある。誰も見たことのない衝撃映像満載!!アメリカの“真実”がここにある。・「政治は受賞に何の関係もない。単に映画として面白かったから君に賞を贈ったんだ」クエンティン・タランティーノ(カンヌ映画祭審査委員長)・「ムーア氏のカンヌ受賞で、米国が思うことを発言できる自由の国と改めて教えてくれた」ホワイトハウス〈こんなコメントを出せるウエットな感覚も素晴らしい〉・「ここでは極悪きわまる腐敗政権が描かれている」ショーンペン(米国監督・俳優)塾という子供たちの世界にも自由な発想・言論・思考が無限に可能な場所であることを願う。学校で束縛されている分・・・。