マスター・アンド・コマンダー

主演/ラッセル・クロウ
 1805年、ヨーロッパ征服というナポレオンの野望の前に、多くの英国軍兵士の命が犠牲となっていた。その過酷な戦場には、未だ幼さの少年たちの姿もあった。あるものは軍人の家計に生まれたために、あるものは苦しい生活から抜け出すために、少年たちは戦う術も知らぬままに、死の恐怖を必死に押し殺しながら、激しい戦闘に加わった。英国海軍フリゲート艦<サプライズ号>にも、そんな運命を背負った少年たちがいた。彼らが他の少年たちと異なる点は、ただ一つだけーサプライズ号には、不敗神話を誇る伝説の艦長、通称“幸運のジャック”と呼ばれるジャック・オーブリーがいた。どんな暗闇の中でも正しき道を照らしてくれる、人生の導き手が・・・。(パンフレットより)
 今年度のアカデミー賞は「ロードオブザリング」がかっさらっていった。この作品も10部門にノミネートされた作品? この?は不評を買うかもしれないが、奇しくも、今回は「ラストサムライ」も候補作であったということを考慮すると。戦艦のキャプテンシップあとサムライの武士道を比べたら、無条件に武士道が判りやすい。西欧の200年前の時代劇として、帆船映画の決定版といわれても残念ながらピント来なかった。
主演のラッセル・クロウは今までの役柄とはちがって、それはそれで味を出してはいたが「インサイダー」「グラディエーター」「ビユーティフル・マインド」に比べると印象が薄かった。ホームラン打者が5打数5安打を打っても物足りなさを与えるのだから、プロとは厳しい世界だ。マックス・パーキスという12歳の少年を演じた役者が良かった。この物語の歴史的背景の重要な役柄だけに、いい意味で目立つ。また、船長の相手役を演じた船医役のポール・ベタニーの演技が光った。俳優陣の豊富さにとにかく感心させられてしまう。映画は製作する側と演じる側のこの二つの両輪で決まる。あえて誰のロマンが一番反映されるかというと、それは監督だろう。監督の想いが映像にそのまま反映されるから映画というのかもしれない。
ヨーロッパのナポレオンの時代、アメリカの西部開拓史の時代、中国の三国志の時代、そして日本の戦国時代。歴史を振り返ると「戦い」というドラマの中に、何か駆り立てるものを見出すのかもしれない。今の殺戮とミサイルに代表される戦争とは訳が違って、いい意味でのロマンを感じるのかもしれない。人間と人間が肉弾となって戦う中に、戦場での人間の心理が色濃く反映される、それは人間そのものが出るということだ。戦略・戦術が兵器によるものでなく、人間そのものであるというところに「映画」としての面白さが、戦いという場面に表現できるということだろう。
人間にとって「戦う」ということは一つの本能なのかも知れない。そこに「死」ということが介在しないのであれば、「競争」とい争いは必要なのかもしれない。塾という業界においても競争による業界全体のレベルアップは好ましいはずだ。教師間同士の熾烈な切磋琢磨は子供のためにも好ましいことだ。子どもたち同士の争い、子供自身の自分との戦い。モチベーションにつながる戦いは本能の為せる業なのかも知れない。ならば、だからこそ、良き指導者を得て、良き指導の下の戦いを望みたいものである。